転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


453 ほんとはね、もっと時間がかかると思ってたんだって



 ロルフさんに叱られてしょんぼりしちゃったバーリマンさん。

 それを見て僕、最初はけらけら笑ってたんだけど、それからご飯を食べ終わるまでずっとしょぼんとしてたもんだから今度はちょっと可哀そうになってきたんだよね。

 だからもうちょっとの間、そっとしといて揚げよっかなぁって思ってたんだ。

「さて、食事も終わった事だし、出来上がった魔道具をルディーン君の館に持っていくとしようかのぉ」

 でもね、ロルフさんがこんな事を言い出したもんだからびっくりしちゃった。

「え〜、バーリマンさんがしょぼんとしてるから、もうちょっと後にしようよ」

「気持ちは解らんでもないが、あまり遅くなるとそれだけ職人たちが困る事になるのじゃ」

 あっ、そう言えばほんとは今日ベニオウの実でもちゃんとお薬が作れるのかを調べるはずだったのに、職人さんたちが困っちゃうから先に魔道具を作る事になったんだっけ。

 だったらさ、早く持ってってあげないと可哀そうだよね。

「じゃからの、出来上がったのであれば持って行ってやりたいのじゃよ」

「そうだね。職人さんたちが困っちゃうもんね」

 って事でちょっと可哀そうだけど、しょんぼりしてるバーリマンさんはほっといて、僕たちは……。

「なんとなく置いて行かれるような雰囲気ですが、私もついて行きますわよ」

 バーリマンさんはね、僕とロルフさんのお話を聞いて置いてかれそうだって解ったみたい。

 だからそう言われる前に、一緒に行くよって言ったんだ。

「おお、立ち直ったか」

「いえ、そこまで言われるほど気落ちしていたわけではありませんよ。ただ、少々自己嫌悪には陥っておりましたが」

 バーリマンさんはちょっと困ったようなお顔で笑いながら、ちょっと大騒ぎしすぎましたねって。

 でも、もうちゃんと落ち着いたし、それに井戸からお水を汲み上げる魔道具だけじゃなくって魔道具屋さんに注文して届けてもらってるはずの魔道ボイラーの事も確認しなきゃダメでしょ?

 だからここに残されても困っちゃうから一緒に行きますよって、バーリマンさんはさっきとは違う明るいお顔で笑ったんだ。


「そう言えば、ストールさんが夕方に迎えに来るって言ってなかったっけ?」

 僕たちはバーリマンさんちの馬車を呼んでもらって、それにお水を汲み上げる魔道具をのっけて僕んちに向かってたんだよ。

 でもその途中で、そう言えばストールさんが後で迎えに来るねって言ってたのを思い出したんだ。

 なのに勝手に移動しちゃっていいのかなぁ? って思ったんだけど、ロルフさんは大丈夫だよって。

「ああ、その事か。それなら問題は無い。ライラが夕方に迎えに来ると言っておったのは、魔道具作りの勉強がこれほど早く終わるとは思っておらなんだわしが指示した事じゃからのぉ」

「そうなの?」

「うむ。ギルマスからは魔道回路だけでなく、本体の構造の勉強から始めると聞いておったからのぉ。魔道具が完成するどころか下手をすると試作品の組み立てさえ今日中には終わらぬかもとまで思っておったのじゃよ」

 ロルフさんはね、水を汲み上げるのに使うような特別な形の道具の作り方は、ほんとだったら先生について何日もかけてお勉強するんだよって教えてくれたんだ。

 でもバーリマンさんの教え方がよかったもんだから、僕が午前中に覚えちゃって魔道具を完成させちゃったでしょ?

 だからロルフさん、実はすっごくびっくりしてたんだって。

「昼の食事にしても、ギルマスがちょうどいい所で切り上げて取りに来るじゃろうとラファエルと話しておったのじゃ。なのに一向に出てこぬから、そろそろ休憩してはどうかと声を掛けようかと思っておったのじゃぞ」

 そう言えばロルフさん、僕たちが錬金術ギルドの奥から出てきた時にお勉強は終わった? って言ってたよね。

 そっか、あれは魔道具が出来上がったんじゃなくって午前中のお勉強は終わったの? って聞いたんだね。

 なのに魔道具がも完成したって聞いたら、そりゃびっくりするか。

 ロルフさんとお話しながらそんな事を考えてると、今度はお爺さん司祭様がこんな事を言い出したんだよね。

「それに関してはわしもヴァルト同様、少々驚きはしたな。だがこの子の場合、村でも色々と変わったものを作り出しておるからそういう事もあるかとも思ったがな」

「変わったものとな?」

 そしたらロルフさんが、何の事? って聞いてきたもんだから、お爺さん司祭様は僕が作った三輪車のお話をしだしたんだ。

「うむ。例えばこの街を訪れる何日か前の話なのだが、前に一つ、後ろに二つの輪がついたちと変わったおもちゃの乗り物を作っておったな」

「変わったおもちゃの乗り物、ですか?」

 そしたら今度はバーリマンさんが何の事? って聞いてきたもんだから、詳しく教え始めたんだ。

「うむ。それがまた秀逸な出来でのぉ。子供が座る椅子の前に着いた丸い取っ手を動かすと前の輪が動くようになっておるのだ」

 馬車って馬が引くから手綱の引き方で動く方向を変えられるから、車みたいに前の輪っかは動いたりしないでしょ?

 だから僕が作った三輪車みたいに前の輪っかを動かして進む方向を変えようだなんて、お爺さん司祭様は考えた事も無かったんだってさ。

「よくよく考えれば、前輪の方向を変える事ができれば進む方向が変わるのも道理。だが今まではその様な事をする必要が無かったから、流石にあれを初めて目にした時はちと驚いたわ」

「私としては、小さな子供をのせるおもちゃという発想に驚きましたわ」

 バーリマンさんはね、子供が乗って遊ぶおもちゃなんて初めて聞いたんだって。

 それにこの三輪車、大人が後ろから押さないと動かないけどその方向は乗ってる子供が決められるでしょ?

 もしそんなものがあると知ったら、いろんな人が欲しがるんじゃないかなぁ? って言うんだよね。

「うむ。ギルドマスターの言う通り、今ではグランリルの村におる小さな子供たちは皆、そのおもちゃで遊んでおるわ」

「村中の子供たちが? ルディーン君はそれほど多くのおもちゃを作ったのですか?」

「いや、初めの内はこの子が作っておったそうだが、今では村の職人が作っておる」

 流石に僕だけでそんなにいっぱい作れないよってお爺さん司祭様は笑ったんだけど、それを聞いたバーリマンさんはちょっと考えこんじゃったんだよね。

「どうしたのじゃ、ギルマスよ」

「いえ、ルディーン君ではなく職人が作れるのであれば、それも早めに特許を取得しておいた方がよいのではないかと思いまして」

 僕たちん村にもね、何に何回かだけだけど行商の人が来るんだよ。

 バーリマンさんはね、その人がもしその三輪車のおもちゃを見て先に特許をとっちゃったら困った事になっちゃうんじゃないかなぁ?って言うんだ。

「なるほど、それは失念しておったな」

「ハンバー司教様、グランリルにはどれくらいの頻度で行商人が訪れるのですか?」

「そうさなぁ。前に来た時からまだそう月日は立っておらぬし、あとひと月ふた月は来ぬと思うぞ」

「それならば焦る必要はありませんね。しかし、とりあえず話だけは先に商業ギルドに通しておくとしましょう。さすれば誰かがこの話を持ち込んだとしても大した問題にはなりませんからね」

 こうして魔道ドライヤーだけじゃなく、手押し式のおもちゃの三輪車も特許登録する事になっちゃったんだ。

 でもあれ、ブレーキがちゃんとできたら回転の魔道具と合わせてホントの乗り物にするつもりなんだけどなぁ。

 もしかして、そのお話もしといた方がいいのかな?



 魔道具だけじゃなく、おもちゃの三輪車まで特許登録する事になりました。

 って言うかこれ、すでにミニ四駆みたいに走るちっちゃな魔道三輪車もあるんですよねぇ。

 それだって普通に考えたら画期的なものなんだけど……。

 でもまぁ、それを特許登録してしまうと誰かが魔道三輪車より先に魔道自動車を作ってしまいかねませんから、ルディーン君がロルフさんたちに話す事は無いんですけどね。


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